卯月書庫

卯月書庫 ―Hero's Life2―

マンガ・小説・etc.の読書解釈文ブログ

芸術的グロテスクロマン

トミノの地獄』

丸尾末広 エンターブレイン(ビームコミックス) ①~進行中

 

丸尾末広の絵を、

当書庫では“レトロ”や“モダン”で

分類しているのですが、

『艶漢』のような

キラキラした夢見るようなレトロ感とは違って、

こちらはグロテスクなレトロ。

路地裏の、人には言えないような、

好奇心が勝る恐怖感

(怖いけど行っちゃうみたいな)

を持つアングラな世界。

 

全編に漂う雰囲気とか、

小道具とか背景とか、

精神世界の描き方とか、

グロテスクなんですけど

嫌悪感というよりは

引き込まれるような魅力を感じます。

“これは芸術だ!”と思えるような。

好みがわかれそうではありますが、

こちらはこちらで好きです。

 

養父の一家に虐待されたあげく、

見世物小屋に売られた双子は

カタントミノという芸名をもらい、

小屋で働く、はずだったのですが……。

人身売買、見世物小屋

娼婦にマフィアに新興宗教

表の華やかさとは違う

裏社会の華やかさ。

人間臭さ。

生臭さ。

それらがギュッと濃縮されているよう。

地獄絵図といえば地獄絵図なのですが、

その中にも

小屋の仲間と囲む食事だったり、

同じ年頃の子との遊びだったり、

兄貴分に連れられて映画をみたり、

お菓子を食べたり、

子供時分に与えられる

当たり前の温かさも存在している。

地獄の中の幸せに

少しの希望を抱くのです。

このまま無事大人になっていけるのかなって……。

 

甘かったぁ……。

 

本当のお母さんと暮らせるかもしれない

という希望が若干ありつつも、

だいたい地獄。

そもそも興業の親方がいけない。

踏み入れちゃいけない

関わっちゃいけない

悪の塊みたいな人だから……。

 

そしてもうひとつ、

空襲を思わせる描写が出てくるので

(まだ戦争は始まっていないんですけど、

夢?妄想?精神世界?みたいな場面で出てきます)

希望では終われない感がすごい……!

 

少女椿』も『瓶詰の地獄』も

絶望的な終わり方でしたし、

トミノの地獄』もそうなのかなぁ。

それでも心のどっかに希望を捨てきれない自分がいます。

甘いっすなぁ~。

……きっと地獄で終わるんだろうな。

 

 

 

 

余談①

似たような画風では

山本タカトがおすすめです。

偕成社の『八犬伝』で知ったのですが、

(挿絵を担当されています)

お話はもちろん滝沢馬琴八犬伝ですから

めちゃんこ面白かったんですが、

それよりイラストのほうにきゅんきゅんきまして……。

児童書扱いなのでグロテスクな描写はありませんでしたが

なにより色っぽい。

芸術的色気+グロテスクみたいな?

好きです。

 

 

 

 

余談②

芸術的グロテスク

というか芸術的絶望?

丸尾作品読んだ後は

ゴーリー読みたくなります。

オススメしたいけど、

おおっぴらにオススメするのはいかがなものか、な

エドワード・ゴーリー

とりあえず

『ギャシュリークラムのちびっ子たち』

で判断して下さい。

アルファベット順に

子どもたちが悲惨な目に……な大人向け絵本です。

後ろにいるのは死神……ですよね。

こういう絵も好き。